接客というと、商品をいかに魅力的に「話す」かに意識が向きがちです。
しかし、成果を出し続けるスタッフほど、実は「話す」よりも「聞く」ことに力を注いでいます。
なぜなら、お客様が本当に求めているものは、こちらが話している中にではなく、お客様が話してくれる言葉のなかにあるからです。
信頼関係を築き、お客様が心を開いてくれたら、次はいよいよヒアリングの段階です。
この聞き方一つで、その後の提案がぴったり合うものになるか、的外れなものになるかが決まります。
接客は「聞く」が9割なのです。

お客様さえ気づいていない「本当の願い」を掘り起こす、ヒアリングの真の目的
ヒアリングと聞くと、「ご希望をうかがう」ことだと思われがちです。
しかし、お客様に「何をお探しですか」と尋ねて、明確な答えが返ってくるとは限りません。
多くの場合、お客様自身も自分の本当の望みをはっきりとは分かっていないからです。
「なんとなく今より良くしたい」
「漠然と不安がある」
その曖昧な思いの奥にある本当の願いを、お客様自身が気づいていない潜在ニーズと呼びます。
ヒアリングの目的は、単に希望を聞き取ることではありません。お客様と一緒にこの潜在ニーズを掘り当てていくことにあります。

「この方にはこれ」という決めつけは、最高の提案チャンスを潰している
ここで気をつけたいのが、お客様にぴったりの商材を、こちらが先に決めつけてしまわないことです。
第一印象や見た目で「この方にはこれだろう」と当たりをつけてしまうと、どうなるでしょうか。
その商材に話を寄せるための質問ばかりになり、ご紹介の幅がぐっと狭まってしまいます。
幅が狭まれば、当然、お客様の潜在ニーズを引き出すこともできません。
決めつけた枠のなかで話が完結してしまい、お客様自身も気づいていなかった本当の願いにはたどり着けないのです。
結果として、無難ではあっても、期待を超えるような魅力的な提案には決してなりません。
だからこそ、決めつけずに、まっさらな状態でお客様の話に耳を傾けることが大切なのです。
話を広げる「オープン」×話を絞る「クローズド」 質問の最強タッグ
潜在ニーズに近づくには、質問を上手に使い分けることが欠欠かせません。質問には大きく二つの種類があります。
ひとつはオープンクエスチョン。
「どんなときに不便を感じますか」のように、お客様が自由に語れる問いです。
お客様の言葉で語ってもらうことで、思いがけない本音や背景が見えてきます。話を広げ、深めたいときに向いています。
もうひとつはクローズドクエスチョン。
「AとB、どちらを重視されますか」のように、「はい・いいえ」や選択で答えられる問いです。
話を絞り込み、確認したいときに役立ちます。
コツは、まずオープンで広げ、徐々にクローズドで絞り込むこと。
最初から選択肢を狭めると、お客様の本音が出る前に話が終わってしまいます。
広げてから絞る。この順番が、潜在ニーズへの近道です。
表面的な希望に満足しない!「なぜ?」のその先にある本音へたどり着く
お客様が希望を口にしたとき、そこで満足して提案に移るのは早計です。
その希望の奥には、必ず理由があります。たとえば「軽いものがいい」という言葉。
なぜ軽さを求めるのかを一歩深めると、「毎日持ち歩くから」「手が疲れやすいから」といった本当の理由が見えてきます。
表面の希望ではなく、その理由にこそ潜在ニーズが隠れているのです。
理由が分かれば、軽さ以外にも喜ばれる提案が見えてきます。
ただし、質問を重ねるときは尋問にならないよう注意が必要です。
ラポール形成(信頼関係構築)の手法である「バックトラッキング(オウム返し)」で相手の言葉を受け止めながら、
会話のなかで自然に「なぜ」を挟んでいく。聞き出すのではなく、一緒に整理していく姿勢が大切です。

上手に「聞く」ほど、お客様にぴったりの答えが見つかる
ヒアリングとは、単なる希望の聞き取り作業ではありません。
お客様も気づいていない潜在ニーズを、一緒に掘り当てていくプロセスです。
お客様にぴったりの商材を先に決めつけず、オープンクエスチョンで話を広げ、クローズドクエスチョンで絞り込む。
そして「なぜ」をもう一歩深めて、希望の奥にある本当の理由にたどり着く。
この積み重ねが、的外れではない、お客様に本当に合った提案の土台になります。
私たちが決めつけず、上手に聞けば聞くほど、ご紹介の幅は広がり、お客様は自分でも気づかなかった答えに近づいていく。
「聞く」が9割と言われるゆえんが、ここにあります。
